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警視総監と警察庁長官、本当のトップはどっち?|警察の階級|古野まほろ - 幻冬舎plus

「巡査長」両津勘吉、「警部補」古畑任三郎、「警部」杉下右京、さらには「警視総監」「警察庁長官」……。このように、すべての警察官には階級・職名が与えられています。でも、それぞれの地位や任務、配置、待遇、昇進のしくみなどを知っている人は少ないのではないでしょうか? 元警察官僚のミステリ作家、古野まほろさんの『警察の階級』は、そんな警察組織の全貌を徹底解説した一冊。「警察モノ」好きなら必読の本書から、一部を抜粋します。

※なお、記事とするに当たり、太字化、改行、省略などの大幅な編集を行いましたので、著者の原稿とは異なる部分があり、その編集による文責は幻冬舎にあります。

*   *   *

頂点に君臨する警察庁長官

9ある階級には含まれず、11ある階級等のうち第11のものが警察庁長官。警察官の階級等のなかで、最上位の警察官です。全国警察を通じて、警察庁長官より序列が上の警察官は、ただのひとりもいません。警察庁長官には、職制上の上司も、階級的な上官もいません。まさに日本警察のトップ、日本警察26万警察官の頂点です

(写真:iStock.com/ilkercelik)

その身分はもちろん警察官ですが(警察法第34条第3項)、その法律上の地位に鑑み、警察官の階級からは明確に除かれています(同第62条)。

その実態は、警視総監同様、指定職=役員たる警視監のなかから選ばれた、警察キャリアの最終勝者。警視監の最終形態・最上位形態です。また僅差ですが、明らかに警視総監に優位します。指定職としての序列が警視総監より上だからです。

警察庁長官は、中央省庁でいえば官僚の頂点たる事務次官に当たり、指定職の最上位と位置付けられますが、警視総監は例えば財務事務次官の下にいる国税庁長官、国土交通事務次官の下にいる海上保安庁長官と同様、指定職序列2位と位置付けられます。

警察庁長官は国の警察庁の社長。警視総監は都の警視庁の社長。統治する組織が違いますから、どちらかがどちらかの上司であるという関係には立ちません。ただ、警察庁長官が警視総監に優越することには疑いありません。すなわち警察庁長官は警視総監の上位にある警察官=上官と位置付けられます

ただそれは、A警察署の警部補はB警察署の巡査部長の上官に当たる――というのと同じ意味合いの一般論。警察官の序列としてはそうであっても、具体的に前者が後者とどのような関係に立つか、前者は後者にどのような命令を出せるか等々とは別問題です。

警察庁長官と警視総監の場合、前者は警察庁のトップとして――例えば石川県警察本部長を(一定限度で)指揮監督するのと全く一緒のかたちで――警視総監を指揮監督できますが、それ以外のかたちで上官として警視総監に命令を発するかというと、さてどうでしょうか。

ぶっちゃけキャリアとして期も近い、長い長い長い知り合いですから、相談したり頼んだりということは幾らでもあるでしょうが……指揮監督だの命令だの、大仰なことにはならないでしょう。お互いが警察キャリアの最終勝者なわけですし。そして近時においては、両者の序列を役人的にも明確にするため、長官が総監の先輩となるように――総監が長官より後の期のキャリアとなるように――人事が調整されています

ただ両者が同期だと、その序列はかなり微妙なものとなります。片や日本警察全体の元帥・大将であるものの、直轄実力部隊を持たない脳髄。片や日本警察最大部隊の元帥・大将であるものの、全国警察を指揮監督する立場にはない体軀。その機能からも、一義的にどっちがエライなんてことは言えません。

英訳でわかる警察庁長官の役割

警察庁長官は、警察庁に1名います。というか警察庁の社長です。当然ながら、警察庁長官の定員は1名です。ゆえに職団を考えることはできません。定員が1名ゆえ、その全国警察官に対する割合は、警視総監同様0.0004%弱。そのキャリア警察官に対する割合は、0.2%強となります。

(写真:iStock.com/akiyoko)

警察庁長官という階級ならぬ職名ですが、警察庁の公式英訳だとコミッショナー・ジェネラル。ここで、

・警視正=アシスタント・コミッショナー

・警視長=コミッショナー

・警視監=シニア・コミッショナー

・警視総監=スーパーインテンデント・ジェネラル

であることを思い出してください。これは実に示唆的です。というのも英訳から、

・警察庁長官が高級行政官の大将であること

・警察庁長官と警視総監のみが大将であること

・警察庁長官と警視総監の大将としての役割は違うこと

の3点が解るからです。

すなわち警察庁長官は、[警視正-警視長-警視監]から成る運営と司令の職団の脳髄たる大将であり、警視総監は、そうした高級行政官たちの脳髄というよりは現場実働部隊の大将とされていることが解ります。そしてやはり、警察庁長官と警視総監が大将として、[警視正-警視長-警視監]という運営と司令の職団に優越し、警察庁の指定職約70名の長2名とされていることも解ります。

成程そこは役人のやること、階級の英訳などという比較的些細なことにも官僚的こだわりを見せています。ちなみにこの警察庁長官にあっては、2013年の英訳改正の対象となってはいません。

警察庁長官は階級ではないので、階級章がありません。しかし警察庁長官章なる、事実上の階級章はあります。警察庁長官章のデザインは法令により『金色の金属製日章五個を一行に配置する』と規定されていまして、要は桜の代紋五ツボタン、金五ツ星といったところ。

そしてこの警察庁長官章も右の英訳同様、実に示唆的です。これにより、(1)警察庁長官と警視総監はある共通の役割を担っていること、(2)警察庁長官・警視総監は[警視正-警視長-警視監]とは異なる役割を担っていることが一目瞭然となるからです。

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